The Farewell



みなさん、ご無沙汰してます。

今回はクラスで取り上げた別のケーススタディについてお話します。今度は相手にとって辛い真実を伝えるかどうかについて。正直さについてについては以前このブログの記事でも取り上げましたが、本当の事を(もしそれで相手が苦しんだとしても)本人に伝えるのか、それとも相手の事を思って伝えないのか、というのはもちろん個人によっても違いますが、文化によっても違いがあるようです。

今度のケーススタディは以下の通り。

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あなたの家族は集団主義文化の国出身ですが、あなたは個人主義文化の国で育ちました。最近あなたは親愛なるおばあちゃんが末期ガンで、余命約3か月と知りました。あなたは家族から、「おばあちゃんの育った文化では、このような場合本人に真実を知らせると生きる気力を失ってしまうので、本人には最後まで知らせず、病状の件については大したことがないとウソをつくということで家族の意見が一致した」、と聞かされました。しかし、あなたはおばあちゃんがよく死ぬ前にやりたい事を話すのを聞いています。なのでおばあちゃんに真実を話した方が人生の締めくくりができ、後悔の無い最後を迎えられるのではないかと思うのですが、このような場合、おばあちゃんに真実を話しますか?
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この質問をクラスにしたところ、半数が「真実を伝える」、半数が「場合による」、そして一人だけ「真実を伝えない」という結果になりました。

学生の意見は以下の通り。
グループA:「真実を伝える」
- おばあちゃんに真実を伝える事で、おばあちゃんが悲嘆のプロセス(Grieving process)を経て自分の状況を受け入れる事が出来るようになるので彼女の為に言うべき
- 自分の祖母が医者のミスでエイズに感染した時、最初は本人に伝えていなかったが、孫を遠ざけられ、理由が分からなくて苦しんでいた。その後伝えた事で理由が分かり、その事実を受け入れる事が出来るようになったので、このような経験から伝える事は本人の為に良いと思う。
- 本人が人生の終活を出来るので伝えるべき
- ウソをつくのは自分勝手

グループB:「場合による」
- おばあちゃんの性格による
- おばあちゃんの状態による

グループC:「真実を伝えない」
- 本人が生きる気力を無くして早めに死ぬかもしれない
- 本人に真実を伝えなくても、死ぬ前にやりたい事をするのを周りの人が手伝う事は可能
- 自分には言う勇気がない

色んな国から来ているにも関わらず、伝えないという学生が1人しかいなかったのは意外でした。

実はこれは最近アメリカで密かに注目を集めているサンダンスで賞を取った映画、”The Farewell” (日本ではまだ出ていないのか邦題が見つかりませんでしたが、中国語では「彼女には伝えるな」という意味の題でした。) のストーリーを元にしたケーススタディです。



*ここからは一応予告編に出ている内容だけ取り上げますが、ネタバレになるかもしれないので注意。

この映画の中で、アメリカで育った子がおばあちゃんの主治医にこう言います。「おばあちゃんに伝えるべきじゃない?嘘をつく、って言うのは悪い事じゃないの?」と。すると主治医はこう言うのです。「でもこれは良いウソなんです。中国の家族のほとんどはこういう場合伝えない事を望みます。」と。そして家族も、「東洋と西洋とでは考えが違う、西洋では自分の人生は自分のものだと思っているだろうが、東洋では自分の人生は家族と言う大きなものの中の一部なのだ」、と言うのです。

実は私も同じような事を経験しています。私の祖母が入院してもう余命があまり無いと分かった時、私の家族は本人に最後まで本当のこと(もう治る見込みはないということ)を言いませんでした。アメリカ在住の長い私はやはり伝えるべきでは??と思って納得がいかなかった事を覚えています。私の場合は本人が「余命について教えてほしい」という意思表明を書いていたと聞いていたから本人の望みをかなえてあげた方が良いのでは?と思ったのです。

でもだからといって実際本人に伝えたところ本人が生きる気力を無くして早く逝かないとも限りません。そして言ってしまった後では取り返しはつきません。もし言ったせいでその人が早く亡くなってしまった場合、この「真実を伝える」という行為は単に自分が本当の事を言いたいという自己満足の為だけではなかったのか?という疑問もでてきます。そしてまた「言ってしまった」というその罪の意識に自分は耐えられるのか?という問題もでてきます。

私の知り合いのご夫婦はお二人とも医者なのですが、どちらも集団主義と言われるラテンアメリカの出身です。そのお二人曰く、自分の国でもこのような場合は本人に伝えない人が多いそうなので、真実を伝える事と個人、集団主義文化とはやはり関係があるのでは?と思うのですが、如何でしょうか。





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