equality-fairness


みなさん、如何お過ごしですか?サンディエゴは最近めっきり暑くなり、30度近い毎日です。大学のクラスも2週目が終わりました。

今の異文化コミュニケーションのクラスにはもちろん生粋のアメリカ人もいますが、中国人、コンゴ人、カタール人もいれば、メキシコ系アメリカ人(親はメキシコで育ったメキシコ人)やインド系アメリカ人(親はインドで育ったインド人)もいます。海外から来ている留学生はもちろん興味深い文化の話をしてくれますが、面白いのは親が海外の人で自分はアメリカで育ったといういわゆる二世の子達です。彼らは文化としてはアメリカ(個人主義)に育っているわけですが、別の文化で育った親と関わる時には親の文化(例えばメキシコやインドなら集団主義)の話し方や関わり方をすると言います。つまり、アメリカで育ったと言っても家の中の文化がアメリカと違うため、そこで異文化の体験をするわけです。

このクラスはビジネス専攻の学生と心理学専攻の学生がいますが、約80パーセントはビジネス専攻の学生です。講義をしていてつくづく思うのは、どんな文化から来たとしても個人個人の価値観は違う、ということです。クラス内では色んなケーススタディ(何が倫理的か、何が公平か、どのような価値観があるか、など)をしますが、一つ一つのケースによって個人の意見は異なるし、いわゆる自分の国の価値観通りに行動するわけではありません(当たりまえですが)。これは正に、エリンマイヤーの言う「色んな文化間の違いよりも文化内での違いの方が大きい」というまさにそれです。

前回のクラスでは何が公平か?というケーススタディをしました。内容は以下の通り。

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Aさんは会社に5年勤めています。最近になって、Aさんは自分が20社のクライアントを担当しているのに、同僚のBさんは10社しか担当していず、また自分の方がBさんよりはるかに多くの利益を出している事を知りました。Aさんは上司に現状を報告し、給料を上げてもらうよう要求しました。ですが上司はこう言いました。「Bのクライアントは難しい案件ばかりだ。Bは君以上に一生懸命、長い時間働いている。それにBと君とは同期で働いてきた期間も同じだ。だから君の給料だけを上げるわけにはいかない。」

1. Aは給料を上げてもらうべきだと思いますか?
2. この場合「公平にする(being fair)」とはどうする事でしょう?

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クラスをYesかNoで分けた時、給料を上げるべき、というグループの方が少なかったものの、意見が真っ二つに分かれました。

グループA:「Yes, Aの給料を上げるべき」
- ビジネスの本来の目的は利益を上げる事だから、利益を上げている人が給料を上げてもらうのは当然。
- Bが長時間働いてそれだけの利益しか出せないと言う事は、Bは能力が無いということ。だから能力のあるAの給料を上げるというのは当然。
- 利益を上げなければ会社は潰れるわけだから、利益を上げる人を優遇すべき。

グループB:「No, Aの給料を上げるべきではない」
- Bの方が案件が難しいということなので能力が無いわけではなく、Bなりに頑張っている。
- 同じ期間働いているんだから一人だけ給料を上げるというのはおかしい。
- Bの方が頑張っている分クライアントの評価が高いかもしれない。グループAは今の現状だけ見て話をしているが、会社の持続可能性(Sustainability)を考えると、Bの一生懸命対応しているクライアントの方が長期のクライアントになり、Bの方が会社の為には良い社員かもしれない。

その他にも、給料を上げるのではなく、臨時のボーナスを挙げるというのはどうか?という意見も出ました。もうお分かりかもですが、グループAの考えはアメリカの会社に多い考えです。能力・実力主義のアメリカの会社では出来る人を優遇する、出来ない人は切る、という考えです。(そしてその出来栄えの評価は4半期ごとの結果だったりする。こういう短期志向で平均勤続年数が4年というアメリカ社会では、社員の5年計画なんて立てられないわけです。)なので人を雇う時もスキルと経験を主に雇い、いかに会社に利益を上げる能力があるか(competent)、が社員を評価する重要な要素になってきます。こういう会社では出来る人の給料を上げる、というのが公平 (fair)ということですね。

そしてグループBは日本の会社に多い考えです。新卒新入で大体同じ時に雇い、「同期」という特殊なグループが出来る日本の企業では、一人だけ抜け駆けさせるということは公平ではない。長期間一緒に働いている間に利益を上げる事もあれば利益を下げる事もあるのでみんなお互い様。そういう色んな経験を経てみんな会社で成長していく。こういう環境で公平 (fair) というのは「みんなと一緒」、ということになります。ですが、これは長期間みんな一緒に働く環境だから行える事だとも言えます。グループAのように出来ないと切られる、という恐れも無いため、弱肉強食のアメリカ企業と違い、ある意味安全で安心して働ける環境とも言えます。

面白かったのは学生は皆アメリカのビジネス専攻なのにアメリカの企業のようなあり方をおかしいと思う学生が多かった事です。(多国の出身が多いからか?)2つのグループは長い間ディベートしていて、話せば話すほど自分の意見を主張する事に躍起になるので(こういう学生の意見の主張の仕方はアメリカらしい)、「異文化コミュニケーションと言う事は相手の事を分かる、という事だけではない、分かろうとしてもどうしても分からない事の方が沢山ある。例えばビジネスなどでこういう相手と分かりあえない状況になった時、どうやって妥協点(Middle ground)を見つけるか、という事が大事だ」、と話したところ、色んな良い意見が出てきました。

例えば、「クライアントに顧客満足度調査 (satisfaction survey) をして、本当にAよりBのクライアントの方が満足しているか調べてみよう」、とか、「Bはやっている事が性格に合っていないんではないか?Bにトレーニングをしてみてはどうだろう?」もしくは、「顧客対応の得意なAに顧客とのやりとりをさせ、Bは裏方に回すと言うのはどうだろう?そしたらAとBが競争する事無く、協力し合えるかもしれない」などです。「(Aのクライアントの方が簡単かもしれないので)AとBのクライアントを交代してみては?」という意見には、クライアントの今までの信頼を失うかもしれないから得策ではない、というのが最終的な学生の一致した意見でした。

このように色んな価値観の人が一緒に何かする、というのは難しいけども色んな意見が聞けて面白いですね。それではみなさん、良い週末をお過ごしください!





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