Marie Kondo


先日、前回とは別の大学院のクラスメートと話をしました。彼は現在サンディエゴの大学2校で心理学を教えているのですが、20年前に日本に行ったこともあり、異文化についても色々と良く知っています。

その彼と最近アメリカで話題になっている近藤麻理恵さんのネットフリックスの番組、”Tidying Up with Marie Kondo” (KonMari~人生がときめく片づけの魔法~)の話題になりました。私もアメリカ人の友人数人から「あの番組を見たけど良かったよ!」という情報を得ており、何故彼女がこんなにアメリカでブレイクしているのかの話になりました。

番組予告:


彼曰く、彼女のやり方にはスピリチュアルな部分があって、それがアメリカのスピリチュアルを支持する人々、特に西海岸のオーガニック野菜を食べ、ヨガをするような人々に受けているのではないか、だそうです。私も帰って番組の1つを見てみたのですが、なるほど、片づけ始める前にまず家に感謝する事から始め、「手放す前に一つ一つのモノに感謝する」という儀式を勧めるこんまりさんの方法は、今のアメリカのリベラルな人々の中で流行っているMindfulness(心を込めて物事を行う)や、Gratitude(感謝の気持ち)に通じるものがあります。

私が見ていてもう一つ気づいたのは、彼女の方法には、日本らしい、プロセス(過程)重視の要素があると言う事です。よく、日本はプロセス重視でアメリカは結果重視と言われますが、洋服をたたむにしてもちゃんと丁寧に手でたたむ、物を捨てる時もただ物を「うっちゃる(鹿児島弁?!)」のではなく、感謝して捨てる、など、日本の文化が推奨する、丁寧さもアメリカ人には新鮮に映っているのではないでしょうか。クラスメート曰く、「結果重視のアメリカ人はプロセス重視の日本人から学ぶ事がある。どっちの要素も大事だから」だそうです。このように、日本のやり方が西洋社会に受け入れられて行く事は喜ばしい事で、こんまりさんのご活躍に敬意を表したいところです。

このように、プロセス重視の日本文化も素晴らしいところが沢山ありますが、時には融通の利かなさに通じる時もあります。以前アメリカ人に聞いた話ですが、一つは、以前のアメリカ人上司が日本でピザを頼んだ時の話。彼は日本のピザ屋さんで欲しいピザを見つけたのですが、あいにくパイナップルが載っている事がわかりました。パイナップルが嫌いな彼が、「パイナップル無しでお願いします」と言ったところ、お店の人にそれはできない、と言われたそうです。彼は、店員がパイナップルを載せない分安くしてほしいと思ったのかと思い、「パイナップル無しでも同じ値段を払いますよ」と言ったそうですが、それでもダメ。最後に彼は、「私がお願いしているのは、まず生地を用意して、ソースを載せ、ペパロニ、玉ねぎ、チーズを載せて、パイナップルをゴミ箱に捨ててから、焼いて欲しいと言う事なのですが!」と言ったそうですが、やはりダメだと言われたそうです。

もう一つは、アメリカ人エンジニアがお店でコーラを頼んだ時の話。アメリカでは大体ソーダ類は自分でソーダマシーンから注ぐようになっていて、何杯おかわりしても良い事になっています。それが、日本では1つのオーダーにつき一杯しかもらえない事を知ったエンジニアは、コーラを「氷無しで」、と頼みました。そしたらカップの半分しかコーラが入ってこなかったと言うのです。なぜ半分なのか店員に聞いたところ、1杯分に入れるコーラの量が決まっているから、氷が無ければこれだけの量になる、と言われたそうです。

アメリカのレストランではメニューの中身を変えてもらう事 (substitution) は大抵の所ではできます。例えば卵を白身だけにしてくれ、とか、フライドポテトの代わりにオニオンリングを付けてくれ、などは快く引き受けてくれるところが多いです。でも、日本のレストランなどではメニューの中の食材を変える事も出来なければ、~を入れないでください、などのリクエストも受け付けない所が多いですよね。(最近は変わっているのかもしれませんが)

これを融通が利かない、などと言う人もいますが、私が思うに、プロセス重視というか、プロセス(マニュアル)の通りにするのに慣れているので、そのプロセスを変えるのを嫌う文化だからなのではないでしょうか。これは、以前紹介したホフステードの文化の第四の次元、「不確実性の回避」にも通じるところがあると思います。つまり、日本は不確実性回避が強い文化なので、未知の事に対しての不安度が高い。マニュアルやプロセスに無い事とは「未知の事」の為、それらをする事に不安を覚え、やりたがらない。その上、もしマニュアル通りにしなくて何かが起こった場合、責任を問われる可能性があるので、そういうリスクも犯したくないという可能性も考えられます。

もちろんプロセス(過程)が大事な事もたくさんありますが、そのプロセスとは何の為に出来たものなのか?というのを考えるのも必要だと思うのですが、いかがでしょうか。プロセスを重視しすぎる為に良いカスタマーサービスができない、プロセス通りにする事に力を入れすぎる為に、結果がそれに伴わなくてもそれに気づかないとなると本末転倒ですよね。(サービス残業をする事で良い社員と見られ、その社員が成果を出してなくても気づかない、もしくは社員が成果を出していても定刻きっちりに帰ると嫌がられるなど)プロセスにフォーカスしすぎて大事な事を見失ってることも沢山あると思います。

要するに、プロセスも大事だし、結果も大事。アメリカが日本から学ぶことも沢山あれば、日本もアメリカから学ぶことがある。最終的にはバランスが大事だという事でしょうか。





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