Diversity and Inclusion


本日鹿児島の大学で異文化の講義をする機会があったので、今回は日本からの更新です。

前回の記事に、「女性は謝りすぎていないか?」に関しての動画を付け足したので、もしよかったら見てみてください。

多様性の種類とダイバーシティ(多様性)トレーニングの目的

今までカバーしたように、多様性といっても、人種が色々いる事や、女性がいるのが多様性ではありません。多様な人々とは、人種、民族性、性別以外にも、性的指向、年齢、宗教、身体障害、なども含まれます。 

アメリカでは1960年代から多様性の教育を特に軍や教育機関や組織などで行っていましたが、1980年代にはアフリカ系アメリカ人公民権運動や、人種差別に関する訴訟に対して会社を守る為、活発に「多様性トレーニング」が行われるようになりました。つまり、「人種差別をされた!」と言って社員に会社が訴訟を起こされた際に、「いや、でもうちはちゃんと多様性とレーニングを社員に行って、人種差別を行わないように社員を教育していますよ!」という、いわば、会社の保身の為に活発に行われるようになったのです。

世代の違いという多様性

多様性の中でも今アメリカで注目を浴びているのが、「世代の違い」です。というのも、実は今アメリカでは歴史上初めて、職場に5世代が一緒の職場で働いているという事で、「違う世代が一緒に働くには」、という趣旨のトレーニングが最近は良く行われています。

その5世代というのはこちら。
1. Traditionalist (伝統主義者:1945年より前に生まれた世代)
2. Baby Boomers(ベビーブーマー:1946-1964の間に生まれた世代)
3. Generation X (ジェネレーションX:1965-1980の間に生まれた世代)
4. Millenial/Generation Y (ミレニアル/ジェネレーションY:1981-1996の間に生まれた世代)
5. Generation Z (ジェネレーションZ:1997以降に生まれた世代)
(この年代の区分けは諸説あるようなので、これはPew Research Centerによるデータです。)

2016年にはGeneration Xを越えて、Millenialが主要な労働人口になり、現在では上から順に以下のような割合になっているそうです。
1. Traditionalist (72歳以上): 2%
2. Baby Boomers(53-71歳): 25%
3. Generation X (37-52歳):33%
4. Millenial/Generation Y (21-36歳):35%
5. Generation Z (20歳以下):5%

<アメリカの各世代の割合の推移>
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この中で、今一番今ターゲットになって悪口を言われているのが、世代を台頭している4.のMillenial(ミレニアル)(21-36歳)という世代です。この世代は戦後の苦労した世代が苦労をしないようにと大事に育てた、いわゆる日本のゆとり世代のような感じで、「仕事が合わないとすぐ辞めてしまう」、「忍耐力が無い」、「権利意識が強い」、などと散々言われています。もちろんこれらはステレオタイプなのですが。でも例えば、お金よりも自由を取り、早く帰ってしまうMillenialの行動などは、ワーカホリックのベビーブーマー世代などからは考えられない訳です。

このように、各ジェネレーションは育った環境が違う為、リーダーシップのスタイルや、コミュニケーションスタイル、仕事に対する態度が違うので、お互いの価値観の違いを学び、うまく一緒に働いていこう、という目的で、最近Generation Difference(世代の違い)トレーニングが頻繁に行われています。

下記がトレーニングに使われる世代の違いの傾向の一例です。
(注:あくまでもこれは傾向として言われている事で、個人差があります。)

<アメリカの世代による違い>(クリックすると拡大します。)
世代の違い

これを見ると、育った世代に起きた出来事によって、世界観が違っているのが面白いですね。

多様性のベネフィット

最近では多様性(Diversity)は、色んな人が色んな情報や視点を持ち寄る為、革新的な物やクリエイティブな物を生み出したり、解決策を見出すのに重要だ、と言う事が研究結果が出てきた事もあり、むしろ積極的に多様性を活用しよう、と言う意味での多様性トレーニングが、様々な組織で行われています。(ただし、研究では、多様な人のいるチームはすり合わせに時間がかかる為、速さや効率を求めるプロジェクトなどは、すり合わせの必要のない同じタイプの人々を使ったチームの方が良いと言う事が分かっています。)

このように推進されている多様性ですが、多様な社員を雇ったからって直接利益につながったり、会社に良い影響を及ぼすとは限りません。研究では、多様性はinclusion (包括する)事をして初めて、ポジティブな結果をもたらすと言われています。要は、色んな人がいて、自分らしくいていいんだよ、という環境を作る事で、みんなが自分のユニークさを生かして組織に貢献できると言うのです。なので、現在は、Diversity and Inclusion(D&I: 多様性の包括)という形でトレーニングが行われている事が多いです。

今後、若い世代が減って移民の受け入れを余儀なくされる日本も、今後このような多様性トレーニングが増えていくのではないでしょうか?





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