Diversity-Inclusion


みなさん週末ですがどうお過ごしですか?北半球は世界中どこもすごく暑いようですね。サンディエゴは暑いと言っても珍しく湿度が高く蒸し暑いので、湿度に慣れていないこちらの人々は主に湿度にやられているようです。

今回は、以前にも取り上げたダイバーシティ(多様性)トレーニングの内容を具体的に書きたいと思います。ダイバーシティトレーニングとは何か?以前の記事でアメリカでは1980年代頃から活発に「ダイバーシティ(多様性)トレーニング」が行われるようになったと書きましたが、このトレーニングは「多様性のある社員は会社にとって有益ですよ」という意味も含めて多くの企業で行われています。

アメリカの企業の多くは会社の中(大抵人事の中)にダイバーシティ・アンド・インクルージョンという部門(Diversity and Inclusion、もしくはD&I、いわば「多様性促進部門」のようなもの)があり、そこでは、社内の多様性を促進する活動をしています。活動の具体的な内容は、人事が新人を採用する際に多様な人々を採用するように計らったり(recruitment)、社員がハラスメントや差別によって辞める事なく(retention)、やる気を無くさないように(engagement)という意味でトレーニングを行います。トレーニング自体は社内のダイバーシティ部門で行われる場合もあれば、外部のコンサルティング会社を雇って行う事もあり、1度に半日の時もあれば3日間の時もあり、目的や金額によって長さはそれぞれです。

なぜこのようなトレーニングが多く行われているかと言うと、会社に取って有益(このトレーニングのおかげで社員が辞めない、など)というのもありますが、それよりも人種差別や性差別の訴訟を起こされた際に「いやいや、うちで差別なんて起こるはずがないじゃないですか。うちは社内でちゃんとトレーニングをしてますよ!」、と言う方が訴訟に有利だからというところが本音だと思われます。実際、去年も世界的大企業のUber(個人タクシー配車サービス)が人種的、性的ハラスメント訴訟を起こされ、総額1千万ドル(計56人が$34,00ドル、483人が$11,000ドル)で示談に至った挙句、チーフ・ダイバーシティ・オフィサー(多様性促進部門の幹部)を雇うに至ったというニュースが流れました。

ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの雇用が増加

ではトレーニングの具体的な内容とはどういったものなのか?前回書いたようなアンコンシャスバイアスについて(人は自分に似た人に親近感を感じる為、自分に似た人を選びがちなのでそれに気付く事で敢えて自分と違う人を選ぶ事を促す、など)や、多様性のある人々を一緒にしても、自分と同じ考えの人しか受け入れず多様な意見や見解も受け入れなくては意味が無いため、包括的(inclusive)な環境を作る必要があるという話もします。例えば、人の話を聞く時に“But(しかし)”という言葉を使わずに聞く練習などをするのです。

私が大学院に行っていた時にインターンとして働いていた会社は、このようなダイバーシティ・トレーニングを行うコンサルティング会社でした。ここの社長はプレゼンがとても上手く、ダイバーシティトレーニングを必要とする企業や学校から引っ張りだこでした(大企業や私学はお金があるのでかなり儲けていたと思われます)。私は数回この会社が行うトレーニングにアシスタントとして参加したのですが、その際の内容で印象的だったのが、One-Up、One-Down(優位な立場と不利な立場)という演習です。 企業秘密になるので具体的なトレーニング内容は書きませんが、この演習で分かったのはアメリカで優位(One-up)な立場の人々の内容です。

一般に、ダイバーシティ(多様性)と言うと、人種、民族性、性別以外にも、性的指向、年齢、宗教、身体障害、なども含まれるのですが、これらのカテゴリーにはそれぞれ優位の立場の人がいます。アメリカの企業内では大体それは以下の人々です。

• 人種:白人
• 年齢:ベビーブーマー
• 宗教:クリスチャン
• 教育レベル:大学卒業
• 性的指向:異性愛者
• 配偶者の有無:配偶者有り
• 言葉:英語
• 国籍:アメリカ国民
• 心身的機能:健常者
• 性別:男

びっくりするのは、企業でこの演習をすると管理職の多くがこの優位な立場のプロフィールに当てはまる人々ということです。つまり、現在アメリカの大企業を牛耳っているのは、ベビーブーマーでクリスチャンで異性愛者で結婚している英語が母国語の健常な白人男性なのです。そして、ベビーブーマーでなくクリスチャンでもない、離婚している日本語が母国語な日本人女性の私などはアメリカではかなりの不利な立場という事になります。

この中には変えられるものもありますが(教育レベル)変えられないものの方が多い(配偶者の有無は変わりますが、これは自分が変えようと思ったからと言って変えられるものでもない)のが事実です。よってこのような演習をすることで、今いる管理職に自分の優位な立場を認識してもらい、バイアスの話をし、人は自分と同じ様な人にバイアスがある(つまり、同様の人を採用したり昇進させたりする傾向がある)と言う話をする事で自分たちの行動を見直してもらおう、というのが狙いです。

また、会社がいくら「多様性」と連呼しても、上層幹部が白人男性だけで多様性が無いと、社員はその会社の実際の在り方を見て「この会社は多様性を謳っているが、口だけだな」と分かります。そしてそのように行動が伴わない会社は離職率が高くなりがちなので、トレーニングだけでなく、採用の仕方や組織の在り方も変えたり(査定評価にも多様性の項目を入れる、など)もします。つまり、社員に言葉でなく会社の在り方で多様性を重要視する会社だと示し、会社に多様性が有益になるようにしようというわけです。

多様性を取り入れると色んな立場の人の目線から物事が見れるようになる為、革新的アイディアや問題解決に有効と言われます。その多様性推進の一環としてとても感動的な「私達はスーパーヒューマン」という2016年のパラリンピックの宣伝をご紹介します。



如何でしたか?途中、サッカーで「シーッ!」と言っているのは目隠しサッカー(Blind Soccer)です。ゴールキーパー以外目隠しをし、鈴などが入ったボールの音を聞いてプレイします。普通見えない人がサッカーは出来ない、と思いますよね。ですが、出来るのです!この歌詞にあるように、「私は何でも出来る!(Yes, I can)」というのがみんなの普通になると良いですね。それでは良い週末を!





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