American Bills


みなさん、ご無沙汰しております。大学での最初の週が始まりました。
私の教え始めたこの大学はいわゆる国際大学なので世界各国から学生が来ています。そしてそこで私が教えているクラスはIntercultural Communication、いわゆる異文化コミュニケーションのクラスです。初日はコンピューターの情報が間違っていたとかでクラスに来れない学生もいましたが、2日目は大分クラスらしくなってきました。

初日は自己紹介の後、まず異文化ということで文化はと何か、の話をしました。文化というとこのブログでもおなじみのホフステードの文化論! 彼の文化の玉ねぎモデルから、国の価値観は往々にして国の紙幣にシンボルとして現れている、という話をしました。紙幣に載っている人達はその功績が高く評価されているからです。そしてその「高く評価された功績」というのがその理由が国が重んじる価値観の現れであったりします。(これはあくまでも国が推進する価値観と言う意味で、国民が皆この価値観を持っている訳ではありません。ですが、毎日そのお金を見て使っているうちに感化されると言う事はやはりあるでしょう。)

例えばアメリカの紙幣に載っているのはアメリカ大統領や建国の父。これから何が読み取れるか??アメリカは主にヨーロッパから渡ってきた人々で作られた国ですが(ネイティブアメリカンが先にいましたが、紙幣に載っていないのでそれもアメリカを象徴してますね)、学生の一人が言った様に自由を求めてきた人々の国とも言えます。よって、自由やアメリカンドリーム、つまり頑張ればだれでも成功できる、というような実力主義を現しているとも言えます。また、大統領は国民に選挙によって選ばれる為、民主主義に価値を置く文化とも言えます。そしてこれはちょっとうがちすぎかもですが、紙幣に載っているのは全て男性。ということで男性至上主義の国とも言えないでしょうか?

では日本の紙幣はどうでしょう?千円札に載っているのは野口英世。彼は医師で細菌学者でもあり、黄熱病の研究で知られています。5千円札の樋口一葉は小説家です。そして1万円の福沢諭吉は武士、蘭学者、著述カ、啓蒙思想家、教育者です。アメリカと比べ、日本は教育や学歴、知性や人類に貢献をした人(黄熱病の研究)などに価値を置く文化だと言えます。(アメリカのジョージ・ワシントンなど黒人奴隷農場主でもあったので人々のために尽くした人とは言い難い)はこの他に、学生に国の紙幣について話してもらったところ、アフリカから来た学生は紙幣には国王が載っていると話してくれました。国王は権力の象徴でもあるので、これはこの国が階級に価値を置く現れとも言えますね。
Qatar Bills
カタールの紙幣

Indian Bills

インドの紙幣

インド人の学生の話では、インドの紙幣はすべてガンディーが載っているそうです。調べたら本当にそうでした。(笑)ガンディーは思想家、社会運動家、政治家ですが、非暴力不服従によってインド独立を成し遂げた人です。つまり、彼も人々の為に貢献した人と言えます。よってインドも人の為に貢献する事に価値を置く国とは言えないでしょうか?一つ面白かったのが、カタールから来た学生の話です。カタールはサウジアラビアの横の半島の国ですが、カタールの紙幣には人物は載っていないというのです。たまたま紙幣を持っているというので見せてもらったら、なるほど、紙幣に人は載っていません。鳥やラクダ、建物が載っているだけです。これはどういう価値観なのか?自然主義?人物を崇拝しないという事もあるのでしょうか?興味深いですね。

注:知り合いの中東に詳しいオランダの異文化コンサルタントからカタールについての意見がありました。彼によると、カタールはイスラム教なので偶像崇拝を禁止しており、人を使った画像も人を崇める事になる為出版しないのだそう。なのでアラブのアートは抽象的な物が多く、幾何学的な形や文字(カリグラフィー)によって芸術を表現するのだそうです。このような宗教的背景も紙幣に現れているんですね。

次回もクラスで気になった面白い話を取り上げたいと思います。





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