Meiwakuboushi


先日アメリカの友人を連れて日本を案内している時に、面白い会話がありました。私が、小さい頃ピアノを習ってた時先生にジャズが弾きたいと言ったら、「あなたがジャズを弾くなんて100年早い!」と言われた話をした時のことです。友人に「え?100年早い?100年したらもう君は死んでるでしょ?意味が分からない。」と言われたのです。それを聞いて私こそ友人の言った意味が分からず、一瞬思考停止してしまいました。そして気付いたのです。これはまさにハイコンテクストコミュニケーションとローコンテクストコミュニケーションの違いだ、と。

はい、ここでまたおさらいです。ハイコンテクストとローコンテクストコミュニケーションの違いを覚えていますか?ハイコンテクストコミュニケーションとは日本やアジア、アラブに多い、行間を読むコミュニケーション方法。それに対し、ローコンテクストコミュニケーションとはアメリカやドイツ、スイスなどに多い、行間を読まずに明確に物を言うコミュニケーション方法。でしたね。(詳しくはコチラコチラ

友人との会話で気付いたのは、私達が使っていたこんなささいな日常のフレーズもハイコンテクストだったんだ!という驚きです。つまり、私達が言う「100年早い」という意味の中には、「100年練習しなくてはならないほどの難しさがある。あなたはそこに至っていない。」というニュアンスが込められているわけです。そのニュアンス(いわば行間)が読めないアメリカ人は文字通り取ってしまい、「100年?100年も経ったらもう死んでいるじゃないか。」となるわけです。

これに関連して、以前読んだ日本人の会話の仕方についての興味深い話を思い出しました。メキシコ系アメリカ人コンサルタント、サラさんは日本で京都のお寺に7年間住んでいました。彼女は日本に来てからよく人に、「あなたは言葉の意味にとらわれすぎ」と言われてたのですが、何故そう言われるのか意味がよく分からなかったそうです。そして、サラさんは自分の言う事が一緒に暮らしている高位の尼さんの気分を害す事が頻繁にあると気づいていたそうなのですが、どうしてなのかその理由が分かりませんでした。

ある日、サラさんがキッチンで働いていると、その尼さんが入ってきて「今から雨が降りそうね。」と言ったそうです。それに対してサラさんはこう答えました。「あ、でももう降ったみたいですよ。ついさっき止みました。」
それを聞いて尼さんは閉口したようでした。そしてサラさんに、「ちょっと話をしたいからこっちに来て座りなさい」と言いました。

サラさんが座ると、尼さんはこう言ったそうです。「私が、『雨が降りそうね』などと言う時は、あなたの意見を聞いている訳じゃないのよ。友好的な雰囲気を作ってあなたと会話をしようとしているだけなの。だから、私の言った事の意味を細かく分析する必要はありません。一番良い切り返しは「そうですね」と同意の相槌を打つことよ。」

サラさんはこれを聞いて困惑しました。尼さんの言う内容はとても偽善的に聞こえたのです。もし私が彼女の言う内容に同意をしなかったら?それでもウソをついて同意をしろっていう事?でも日本文化を学びたい彼女は尼さんのアドバイスを聞くことにしました。そして尼さんの言う事にすべて同意するようにしたら、彼女との関係が劇的に良くなったというのです。

この経験からサラさんは、日本は文字通りの意味をしゃべる文化ではないと分かったと言います。つまり、「今から雨が降りそうね」、と言う言葉の内容が真実かどうかを話すのが重要なのではなく、その言葉を発する事で友好的な雰囲気を醸し出し、同意する事によって雰囲気に同調して一緒に調和を作る、と言う行為に重要な価値がある文化なのだと分かったそうです。(出典はコチラ)このように、日本の「行間を読む」、もしくは「空気を読む」という会話方法には私達も当たり前に思いすぎて本当の意味は気づかないうちに言ったりやったりしている事がありそうです。

アメリカに住んでいて、言葉通りを口にする文化に慣れてくると、「日本人はNoとはっきり言えない」だとか、「言っている事と思っている事が違うから信用できない」というようなネガティブな面も見えてきます。ですが上記の例にもあるように、日本人の会話方法というのは、和歌を詠んでいた頃から「行間を読む」を情緒としてきた国ならではの、小さい島国で争いをできるだけ起こさず調和を保って生きていこうとした日本人の知恵から生まれたものなのだと分かります。でもこのような会話の良さは、「真実を話す事が絶対に正しい」という考えの社会に育った人にはかなり分かりづらいのは確かなようです。。。

話は変わりますが、最近実家に帰った際に面白い物を見つけました、それは、新型機の電話についている「迷惑電話防止」という機能。母によると、これは迷惑電話がかかってきた時に押すと、『ピンポーン』と、いかにも誰かが訪ねてきたかのような音が鳴り、「すみません、誰かが来たようなので失礼します」と、迷惑電話を穏便に切れる機能だそうです。これも、はっきりと「興味ありません」と断れないハイコンテクスト文化ならではの機能でしょうか。(笑)

ところで、こんな私のおタクな趣味の異文化コミュニケーションの知識も役立つ機会がやってきました。どうやら夏に本格的に教える機会が持てそうです。時期が来たらご報告します。






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